4,313億円の予算から、世田谷の暮らしを考える

「世田谷区の予算」と聞くと、自分の暮らしとは少し遠い話に感じるかもしれません。
しかし、子育て、学校、高齢者や障害のある方への支援、ごみ収集、道路や公園、地域活動、防災など、私たちの身近な暮らしの多くが区の予算とつながっています。
そこで今回から「数字で見る 世田谷区の予算」として、世田谷区のお金を16回に分けて見ていきます。
私は「孤立・孤独を世田谷区からなくす」ことを政策の基本にしています。
ただし、最初からすべての予算を孤立・孤独に結びつけることはしません。
まず第1~5回では、世田谷区にはどれくらいのお金があり、何に使われ、どこから入ってきているのかという基本から確認します。
そのうえで第6回以降、ひきこもり、居場所、子ども・若者、高齢者、障害のある方や家族、相談支援などを横断して、「孤立しない地域をつくるためのお金」という視点から考えていきます。これは、このシリーズで予算総額などの財政の基礎をまず正確に理解し、その後に孤立・孤独との接点を検討するという作成ルールに沿った進め方です。
まず結論 世田谷区の一般会計は4,313億5,300万円
令和8年度(2026年度)の世田谷区の一般会計当初予算は、
4,313億5,300万円
です。
前年度の3,996億1,700万円から317億3,600万円増え、増加率は7.9%です。
世田谷区は令和8年度予算を「次世代を育む 暮らし応援予算」としています。
ここでいう「一般会計」とは、福祉、子育て、教育、道路、公園、ごみ、防災など、区の基本的な行政サービスに使うお金をまとめたものです。
この記事では、まずこの一般会計を見ていきます。
4,313億円は何に使われるのか
4,313億円と言われても、大きすぎてイメージしにくいと思います。
そこで、大きな使い道から見てみます。
令和8年度の一般会計では、主に次のようになっています。

| 主な使い道 | 予算額 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 民生費 | 約1,949億円 | 45.2% |
| 職員費 | 約718億円 | 16.6% |
| 総務費 | 約512億円 | 11.9% |
| 教育費 | 約440億円 | 10.2% |
| 土木費 | 約356億円 | 8.3% |
| その他 | 約339億円 | 約7.9% |
| 合計 | 約4,314億円 | 100% |
出典:世田谷区「令和8年度当初予算概要」
※表示単位の四捨五入により合計が一致しない場合があります。
最も大きいのが「民生費」です。
民生費とは、高齢者、障害のある方、子ども、生活に困っている方などへの福祉や支援に使われるお金です。
約1,949億円で、一般会計全体の45.2%を占めています。
つまり、世田谷区の一般会計のおよそ半分が民生費です。
令和8年度は、障害者自立支援給付、私立保育園の運営、保育料負担軽減、保育施設整備などが増額要因として示されています。
予算はここ数年で大きくなっている
令和8年度だけを見るのではなく、過去と比べてみます。
世田谷区の一般会計当初予算は、次のように推移しています。

| 年度 | 一般会計当初予算 |
|---|---|
| 令和4年度 | 約3,336億円 |
| 令和5年度 | 約3,620億円 |
| 令和6年度 | 約3,716億円 |
| 令和7年度 | 約3,996億円 |
| 令和8年度 | 約4,314億円 |
令和6年度の一般会計予算は3,715億5,154万7千円でした。
令和7年度は3,996億1,700万円となり、前年度から7.6%増えています。
そして令和8年度は4,313億5,300万円となりました。前年度比では317億3,600万円、7.9%の増加です。
単純計算すると、令和4年度の約3,336億円から令和8年度の約4,314億円まで、4年間で約977億円増えています。
ただし、
「予算が増えた=行政サービスが良くなった」
とは限りません。
ここは重要だと考えています。
なぜ予算が増えているのか
世田谷区は令和8年度の一般会計が増えた主な理由として、
本庁舎等の整備
学校の改築・改修などの公共施設整備
障害者自立支援給付
私立保育園運営などの社会保障関連経費
などの増加を挙げています。
例えば、民生費は前年度から約133億円増えて約1,949億円となりました。
総務費は、本庁舎等整備などにより約90億円増えて約512億円。
教育費も、小中学校の改築・改修などにより約42億円増えて約440億円となっています。
一方、公債費は前年度より減っています。
このように「予算が317億円増えた」という数字だけを見るのではなく、
何が増えたのか。
なぜ増えたのか。
一時的な支出なのか、今後も続く支出なのか。
というところまで見ていく必要があります。
当初予算と、現在の予算は同じではありません

もう一つ注意したい点があります。
4,313億5,300万円は、年度が始まる時点で組まれた「当初予算」です。
年度の途中で、新しい課題への対応などが必要になれば「補正予算」が組まれます。
令和8年度は、第1次補正で10億1,500万円が追加され、一般会計は4,323億6,800万円となりました。
さらに第2次補正で8億600万円が追加され、第2次補正後の一般会計予算は4,331億7,500万円となっています。
したがって、
当初予算 4,313億5,300万円
第2次補正後 4,331億7,500万円
は分けて考える必要があります。
このシリーズでも、「当初予算」と「補正後予算」を混同しないようにします。
予算を見ると、区が何にお金を使おうとしているかが見えてくる
予算には、行政がその年度に何をしようとしているのかが表れます。
福祉にいくら使うのか。
子どもや教育にいくら使うのか。
道路や公園にいくら使うのか。
公共施設にいくら使うのか。
そして、そのお金を税金だけで賄うのか、国や東京都からのお金を使うのか、区の貯金にあたる基金を使うのか。
こうしたことを一つずつ見ていくと、世田谷区の政策の全体像が少しずつ見えてきます。
ただし、予算はあくまで「これから使う予定のお金」です。
予算がついたことと、その政策によって実際に暮らしが良くなったことは同じではありません。
予算分析では、できる限り、
地域の課題
→ 行政の取組
→ 予算
→ 実際に行われたこと
→ 利用した人や支援につながった人
→ どのような変化があったのか
という順番まで確認していく必要があります。
これは、EBPMと呼ばれる考え方にもつながります。EBPMとは、簡単に言えば「数字や事実などの根拠を使って政策を考えること」です。このシリーズでも、予算額だけで政策を評価しないことを基本にします。
孤立・孤独との関係は、これから丁寧に見ていきます
私が特に確認していきたいのは、こうした大きな予算の中で、
「困っていても制度につながれない人」
「相談先が分からない人」
「地域とのつながりを持ちにくい人」
に、支援が実際に届いているのかという点です。
ただ、第1回の段階では、4,313億円のうち「孤立・孤独対策が○億円」といった合計は示しません。
孤立・孤独は、一つの部署や一つの事業だけで対応するものではないからです。
ひきこもり、生活困窮、居場所、子ども・若者、不登校、高齢者、障害のある方や家族、地域活動、相談支援など、多くの分野にまたがっています。
まず世田谷区の予算全体を理解したうえで、第6回以降、これらを横断して確認していきます。
その際、予算額だけを見るのではなく、地域にどのような課題があり、行政が何に取り組み、その取組が実際に誰に届き、どのような変化につながったのかまで確認していきます。

吉永しんいちの考察
今回、最初に確認したのは「4,313億円」という大きな数字です。
私が大切だと考えているのは、この金額の大きさだけではありません。
予算が増えたのであれば、
「なぜ増えたのか」
そして、
「そのお金によって、誰に、どのような支援やサービスが届くのか」
まで確認する必要があります。
特に、孤立・孤独の問題を考えるときには、「制度がある」「相談窓口がある」「予算がついている」というところで終わらせず、必要としている人が実際にそこにつながれているのかを見ることが重要だと考えています。
一方で、道路、学校、公共施設、防災など、直接「孤立・孤独対策」と呼ばれない予算も、安心して地域で暮らしていくためには必要です。
そのため、何でも孤立・孤独対策に含めるのではなく、
直接関係するもの
暮らしの基盤として関係するもの
直接の関係を確認できないもの
を分けながら見ていきたいと思います。
今後確認したいこと
今回の第1回では、世田谷区の予算全体を見ました。
ここから先は、もう少し細かく見ていきます。
次回は、
「増え続ける世田谷区の予算。その変化をどう見る?」
をテーマに、予算がここ数年でどのように変わってきたのかを確認します。
その後、
何にお金を使っているのか
お金はどこから入ってくるのか
区の貯金や借金はどうなっているのか
を順番に見たうえで、孤立・孤独や地域のつながりに関係する予算へ進みます。
「4,313億円」という数字を知ることをゴールにするのではなく、そのお金が私たちの暮らしにどうつながっているのかを、一つずつ確かめていきます。
参考にした主な資料
・世田谷区「令和8年度(2026年度)当初予算概要」
・世田谷区「令和8年度(2026年度)世田谷区予算・同説明書」
・世田谷区「令和8年度(2026年度)世田谷区予算説明書(別冊)」
・世田谷区「令和8年度(2026年度)第1次補正予算概要」
・世田谷区「令和8年度(2026年度)第2次補正予算概要」
・東京都総務局「令和8年度 特別区当初予算状況」
